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今年もSIHHの季節がやってきた。

SIHHとは、世界最大級の時計の見本市であるバーゼルワールドから高級ブランドが独立して立ち上げた見本市で、参加ブランドはカルティエ、ランゲ、バセロン、ジャガールクルトなど錚々たるビッグネームを有するリシュモングループに加え、世界最強の時計メーカーとなったリシャール・ミル、そして雲上の一角、オーデマピゲ(この二つは翌年以降の参加は未定)など。パテックはバーゼルのほうで出ている。

というわけで早速色々とPreviewがネットに上がってきているのであるが、時計好き界隈がやたらざわついているのでのぞいてみるとこんなものが投稿されていた。

FullSizeRender

一瞬よくわからなかったのだが、どうやらオーデマピゲがCODE 11.59と称している新作モデルらしい。見た感じクォーツクロノみたいだなあと思ったのだが、どうやら結構同じことを考えている人はいたようで、SNS上には一種の混沌が生まれている。

クロノグラフモデル、お値段約500万円。
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 (ByMonochrome-watches.com)

三針モデルはこちら。
「audemars piguet code 11.59」の画像検索結果
(ちなみにお値段300万円くらい。ランゲ1下さい)

うーん。なんか相当なチープさを感じる…。少なくとも雲上オーラは皆無。ケース、特にラグがとても良さげなのは分かるのだが、純粋にこれが欲しいというオーデマファンは何人いるのだろうか…?

ちなみにSNSでは結構辛辣なコメントが上がっており、やはり皆同じ様な感想を抱いているようであった。
  • 予算が150ドルなんだけど、これとFOSSIL、TIMEX、どれ買うかで迷ってるんだ。アドバイスある?
  • 11.59の意味?11分59秒でデザインを決めたという事か。
  • オーデマピゲがESPRITの時計をパクる時代が来るなんて。
  • 完璧なマーケティング活動の産物。
  • 文字盤にGuessって書かれてないから、あんまり要らない。
  • APはこの惨劇をどう乗り越るのか?
  • まるでそびえ立つクソだな
  • 三針モデル、シンプルでいいじゃないか。担当者が少しDW(ダニエルウェリントン)の広告を見すぎてしまっただけだ。
  • Pathetic(悲愴)。
  • 社名を『Royal Oak Co., Ltd.』に変えるための準備だろう。
  • これは今すぐ買うべきだ、なぜならこの反応を見てすぐに生産を止めるだろう。将来、非常に希少なモデルになる。
みんな大好きHODINKEEの投稿のコメント欄はもはや大喜利化していて、味わい深い。是非一度目を通して見てくださいませ。

というわけで散々な言われようであるのだが、一次ソースを確認しないことには始まらないので公式サイトに飛んでみた。
CODE 11.59のページ
「Audemars piguet code 11.59」の画像検索結果

ふむふむ・・・なにやら、丸形ケースの真ん中部分に八角形をモチーフにしたデザインを取り入れることで独創的なデザインとして仕上げ、大変複雑な製造過程は人類の挑戦と言える…との事であるが、そうなのか?それはちょっと言いすぎではなかろうか?

確かに八角形的なものは中に見えるが…。でも結構頑張らないと、これ、見えない。。。
ao11590

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 (ByMonochrome-watches.com)

ムーブメントはとても興味深いのだが、如何せんこのデザインではその話題にたどりつく事が困難だと感じた。

たまーに、シャレで超高級時計と山手線などの電車内の風景を一緒に撮ってアップしてる人がいるが、この時計でそれをやってしまうとリアリティありすぎで冗談では済まされないだろう。

あと、さるオーデマピゲのVIPユーザーがこの発表を生で現地で聞いていたようだが、CODE 11.59の全てのモデルに対する感想が、”APはより成長する事となる”という二行だけで済まされていて、気の毒に思ってしまった。

また、各時計メディアがこのモデルについてどう書くかというのはとても興味深いのだが、早速、このモデルを賞賛している時計メディアが攻撃を受けていて気の毒である。ビジネスとはいえ、人間関係などもあるから悪く書けない人もいるだろうに。

中には、とても控えめに『ケースと文字盤は良いかもしれない、だが、愛するAPに期待していたものとは少し違っていた。ただ、トゥールビヨンやスケルトンバージョンなどのハイエンドモデルは少し興味深い』と書いていたさるメディアがあったが、超ビッグネームであるAPを向こうにしてはせいぜいこの辺りが限界であろう。ただ、目をつぶってやり過ごすには、オーデマピゲは少々このモデルに入れ込みすぎていたように思える。

裸の王様の物語で登場する家来たちや町の人々は、ただ回線を通じてモニタの向こう側に座っているだけであり、人間の本質は寓話の綴られた時代となんら変わってない。逆に言うと、正直者は誰であるかが、少しずつ分かってくるのが面白い。

これに比べ、我らがジャガールクルトはジャイロトゥールビヨン、パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーターを搭載する超複雑時計を出展しており、非常に評価が高い。これはかなり嬉しい事である。ファンとはこういうものだ。まあその分、APファンの方々の気持ちは推して知るべしなのだが…。
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ルクルトの超複雑時計、超かっこよい!! (ByMonochrome-watches.com)


波乱の幕開けとなったSIHH2019、今年もたくさん現地組の報告を期待しております。行ってる方はぜひガンガンブログやSNSにUPしてくださいませ。


※追記
Bloombergデビューだそうです。
記事→“オーデマピゲが新作を発表、反応は…『最悪』”