SEIKO BELL-MATICのオーバーホール その2
さて、バラしていこう。まずは日の裏から。SEIKOのデイデイトムーブメントは、実用性を効率よく追いかけているオーラがひしひしと感じられて素晴らしい。きっと多くの社会人の企業生活をしっかりと支えてきた事であろう。
目立った汚れのないパーツ。分解された形跡すらない、素晴らしい。
カレンダーを外したところ。ばねはロディコを吸着させながら慎重にピンセットで取り外す。間違っても細めのドライバーを差し込んではじいたりしてはならない。
次に輪列をばらしていく。単純明快な構成である。
受けを外した状態、目が行くのはやはり左上のむき出しのゼンマイ。これはアラームを駆動させる用のゼンマイで、主ゼンマイとは独立して手巻きで巻き上げる。このゼンマイの収め方はBell-Maticの大きな特徴といえる。
受けの裏側。古い油汚れがこびりついている。
板状のコハゼ、三番車、四番車を外す。
香箱も外す。この通りよごれがこびりついている。
さて、これは二番車。
分針が取り付けられ一分回に一回転するのだが、この写真からわかるだろうか?根元のあたりに茶色い油汚れがびっしりついており、粘り気がとても強くなってしまっている。この歯車が回らないのが今回の時計の不動の原因といえる。
洗浄にかける前に手でしっかりと汚れを落とす。するとこのようにすっきり!もっかい地板に戻してチリ吹きで空気をあててみて、抵抗なく回ることを確認する。
次にアラーム機構、切替機構の分解を行う。
この時計は
1.時計機構
2.アラーム機構
3.日付・曜日機構
と大まかに三つに分かれていて、機能別に意識して分解していくと混乱せずに済む。
バネも使われているため木で押さえながら慎重に取り外していく。
切替機構には細かいギアがたくさん。アラーム時計は黒のグラフに比べてシンプルなイメージがあるが、切替機構はクロノグラフより部品も多く難しいと思う。
どうでもいいがこの台はSEIKOのS-682というもので使いやすくて大好きなのだが、プラスチックにはいっているスリットの隙間によくパーツがおちるので、このように分解や組み立ての時はセロテープで覆ってしまう。
あらかた外した状態。あとはテンプの穴石などを外す。
テンプ受けから穴石を外した状態で地板に戻す。こうすることでひげゼンマイの超音波洗浄ができる、とTwitterで教わったのであった。なんとリプライで教えてくれたのは自宅で時計制作をされている小栗大介氏。トゥールビヨンを自分で作ったりしているすごい人。
分解したパーツはこのように細かく小部屋に分かれている弁当箱?のような箱に収め、ちゃんと写真でどこがどう固まっているかを残しておく。こうすることで、組み立てるときにねじの組み合わせを間違わずスムーズに進めていける。洗浄した後は同じ位置に戻すことで写真を見ながら間違いなく組み立てられる。
メインスプリング。香箱の中は意外ときれいであった。ゆびで抑えながら丁寧にほどいて外していく。
拭いてみると古いグリースの汚れが結構ついてくる。こちらも超音波洗浄の前にしっかり手で洗う。ベンジンをいれたガラスケースに入れてこすったりして汚れを落とす。
超音波洗浄。位置を変えながら何度もやる。↑は最初にざっと洗っているところで、ケースはこの後プラスチック風防を外して磨いてまた洗浄して、、、というのを何度か繰り返す。ケースも、磨くたびに洗浄して研磨剤を落とす。
水ですすぎ乾燥させ、終わったら注油しながら組み立てていく。
組み立ては、分解の逆の手順で進めていく。また、ちゃんとマニュアルを読みながら進めていくのが重要じゃないと手戻りが発生したりして後で悲しい思いをすることになる。
輪列も注油しつつ戻していく。
切替機構が終わったのでアラーム機構へ。
ちゃんとバネと石も注油して戻しておく。
リュウズとアラーム用ボタンを戻し、動作を確認しながら組み立てていく。
アラームボタンを引かずにリュウズを引いた動作やアラームボタンを引いた(=アラームをONにした)状態でのリューズの操作など、パターン別にきちんと動くか動作を確認していく。
それがおわったらカレンダー機構へ。
カレンダー抑えを取り付けたところで、ある部品が箱に残っているのに気付いた。右下にある、星のような形をしたアラームを駆動させるための歯車である。さっき輪列組んだときに一緒にいれとかないといけなかったのを忘れていた
うーんこういう小ボケが作業効率を落としてしまう。もっともっと改善の余地ありである。
つづーく
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