MEMOMATICのヒゲゼンマイ修正 前半
むかーし、歩度調整をしようとして勢い余ってヒゲの形を変えてしまい、不動となっていたオメガのメモマチック。意を決してヒゲゼンマイの修正を思い立った。
素人がヒゲゼンマイをいじるのは大変危険である。髪の毛より細い針金が、計算され尽くした曲線を形作り、時計の心臓部として絶えず稼働する部分である。
素人が触ろうものなら悲惨な結末になるのは火を見るより明らか。
が、壊れたらその時は新品のヒゲゼンマイを買おう…と踏ん切りがついたので、なおしてみようと試みる。
裏蓋を開け、ローターとスペーサーを外す。一つ確実に言えるのは、ローターをつけた状態で歩度調整をするべきでは絶対にないということである。
必ず、自動巻機構、テンプ周りの邪魔な部品を外してから歩度調整をする。
ここから、テンプ受けを取り外す。
出てきた。
お分かりだろうか、ヒゲゼンマイが偏ってしまっている。これでは正確な振動などできるわけもない!
図中の赤い線の交点が、ヒゲゼンマイの本来の中心点。大きく左に寄っている。
これは、ヒゲ持ちを急激に動かしたことでヒゲゼンマイの形が変わり、なんとか治そうとしたらさらに悪化してしまったものである。
これを拡大率の高いキズミで見ながら、ピンセットで直すのだが、直す前にどこをどのくらい曲げればよいか超真剣に考える。
本来なら顕微鏡を使って直すものらしい…
そして意を決して、ココ!ってところをピンセットで慎重にひん曲げる。南無三。
これが…
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こうなる。
ほっ…
横からも見て、傾きや広がりをチェック。奇跡的にうまくいった、気がした。
さて、載せて動かしてみるのだが…
その前に天心ホゾと受けに注油。下に見えるフォークみたいな形のやつがアンクル。左に掘られている文字は、オメガのロゴΩと、この、機械のキャリバーナンバーである980。
テンプを載せるのは、時計をいじる中でもとても重要で難しいステップである。
いつも緊張する。
受けを乗せたところ。ネジ止めする前に、必ずテンプをつつきながら問題なく振れる事を確認する。ここで、天心がホゾ穴に入っている事を何度もなんどもしつこく確認する。天心ホゾを折るというのが、最も絶望的な失敗であるからだ。
絶対にOKと確信を持ってから、○印にある受けをネジ止めする。これも、少し締めては振れ確認、少し締めては確認…と、とにかく慎重に…

元気に振れ出した!!
…この感動は、時計をいじった人でないと分かるまい。ずっと止まってたお気に入りの時計が動き出したのである。…感動だ。
後半へーつづく。
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