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Wittnauer Cal.10WA搭載、1950年代アラーム時計のオーバーホール

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少し前の話になるが、ずっと気になっていた時計がようやく入手できたので早速手入れすることにした。

この時計、昔とあるビンテージ時計店で見かけたことがあり、その時時計師さんが言うには「この時計はそこらへんの時計師が触ったらたいてい壊されます」と言っていたので、いざ時計が手元に来ても自分で触るのはとても怖かった。しかし整備しないと使えないため、細心の注意を払って手入れしよう!と決心したのであった。

しかしいざとなるとどれだけ探しても分解する手順がどこにも載っていないため、大変慎重にばらし方を考える必要があった。2日間くらい時計とにらめっこして、どうすればもっとも時計にダメージを与えるリスクを減らせるかを考えながら、ばらす方法を考える。

結果、どこかの海外サイトで、ベゼルを外した後の時計の写真があり、それをよーーく見ることでベゼルがはめ込み式であることがわかった。なので、このようにマスキングテープを貼って養生し、ゆっくりと、まっすぐコジアケを差し込む。すると・・・このようにベゼルが浮き、取り外せるようになるのであった。
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こちらがベゼルの裏。この時計、とても変わっていて、ベゼルを回転させることでアラーム針を回しセットする。しかも、同時にアラーム用のゼンマイも巻き上げるのである。↓の内側には、ベゼルの回転をムーブに伝えるための歯車が見て取れる。
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ベゼル、風防を取り外したところ。文字板の細かいギョーシェが美しい。かつ、インデックスが三角形、いわゆるシャークトゥースの形になっていてとてもカワイイ。アラームインジケーターはウネウネのサーペント針で、青焼きが施されている。
この年代のビンテージ時計で、長針と短針の夜光がこれだけきれいに残っているのは…奇跡ではないだろうか。
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ものすごく状態がいい。このモデルは防水性も低いため、たいていのモデルは湿気にやられ文字板に錆や汚れなどのダメージが浮いているのが常である。よーーく見ると、スモセコのインナーダイアルに子擦り傷がある。この理由は後でわかる。
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ほれぼれする美しさ。なお、文字板の周りに銀色の金属がぐるっと円を描いて置かれているのがわかるであろう。これは音環(という表現がいいのかはわからない)で、ムーブメントのハンマーがこれを叩いて音を出す。一般に、長ければ長いほど音がきれいに響くといわれている、と思う。
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裏ブタは単にはめ込まれているだけなので、こちらもこじ開けで開けられる。美しいムーブメントである。耐震装置がないので、時代としてはかなり昔のものということがわかる。ちなみに、1950年代の時計である。
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ムーブメント近影。穴石の周囲がしっかり面取りされ研磨されているなど、非常に丁寧に作られた印象を受ける。ねじもしっかりしているのがわかるであろう。
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キドメねじを外し、ムーブメントを取り出す。
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横から。必ずばらすときに、横から写真を撮り針のクリアランスを記録しておく。これが組みつけの時に大変役に立つ。
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横から。これインデックスも針もギョーシェも良すぎでしょ!?
少しはみ出ている歯車は、ベゼルの内側の歯車と連携してアラーム用のゼンマイを巻き上げるもの。
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アラーム用ハンマーはコレ。
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インデックスや針には経年のくすみが見られる。
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ばらしていくので針を外すのだが…開けてびっくり。この秒針のハカマを見よ!wめちゃくちゃ長いので引き抜くのに一苦労であった。これが理由で、前に整備した人が、ドライバーかピンセットをインナーダイアルに擦って、線傷がついてしまったのであろう。うーん、悲しい。
この秒針、しかもよくみると先端に向かってすこし膨らんでいるのだ。形がカワイイ。
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分針を取り外す。
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時針を取り外す。アラーム針の美しさが際立つ…この青い輝きを見よ。
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さて、ムーブメントをばらしていく。これは輪列受けを取り外したところ。
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角穴車、丸穴車を取り外したところ。
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香箱受けを取り外す。
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ベゼル。風防も傷だらけなので、ベゼルの金メッキに影響がないよう養生して磨く。
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養生したところ。
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少しだけ金メッキ部分を磨き、プラスチックは耐水ペーパーとサンエーパールで順番に磨く。まあまあきれいになった。
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さてこのムーブ、なんと・・二階建てなのである。↓はアラームモジュールの上下を分離したところ。アラームモジュールはサンドイッチのような構造になっていて、間にアラーム機構が収められている。それがそのままベースとなるムーブメントに乗っかっているだけであり、かなり大雑把な二階建て機構である。
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アラームの仕掛けについて解説。No.0のところがアラーム時刻になると押し下げられ、NO.1の部分の細いピンが解放される。これにより、No.2のゼンマイの力がNo.3の歯車に伝わり、この歯車がギザギザの歯を持つアラーム用歯車をぶん回し、それによりNO.4のハンマーが振動する、という仕組み。シンプルである。下に見えてる巨大な歯車は、ベゼルの回転を受けアラーム針を回すためのもの。
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このあと、さらに細かいパーツの洗浄、組み上げがあるのだが省略。上記のアラーム機構に気を付け、注油ポイントを見極めるのが重要。あとは基本的なムーブメントのOHでいえる。以下はすでに仕上がった状態。
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どうだ、、、この可愛さ。インデックス、針、ケース、すべて最高である。そのうえ、ベゼルを回転させてアラーム針をセット、しかもアラーム用動力を巻き上げるというとんでもない仕様。そもそも、アラーム時計でリューズが一つしかないというのは大変珍しいのである。
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…余談であるが、この時計、なぜか玄人受けがものすごくよい。海外の超有名コレクターや、ハイジュエラーのトップ顧客、個性的な名物コレクターなどがインスタのコメントなどでやたら反応してくださるのである。日本においては、高級時計専門誌Chronos日本版の編集長、広田氏が手に取り『これはすごく良いですね、欲しいです』と真顔でおっしゃっていた。僕と同じく機械式アラーム時計を愛する、結構ディープな女性時計コレクターが海外にいて、その方もずっと探していると言っていた。実は僕の手元に微妙にニュアンスの異なるこれと同じ時計がもう一本あるのだが、そちらも早く整備して手放すべきなのだろうなあとぼんやりと考えている。

これまた余談であるが、Wittnauerではこの素晴らしいシャークトゥースデザインのインデックスをもつアラーム機構がない手巻きのモデルが存在する。実はそちらも手に入れたくて探していたのだが、状態の悪いものしかなく(それでも超レア)当面の入手はあきらめたのであった。

と、以上、結構長く探してたWittnauerの珍しいアラーム時計の、さらに珍しいOHの記事でした。多分、Cal.10WAのここまで詳しい分解写真は世界でここにしかないと思う。

SEIKO BELL-MATICのオーバーホール その3

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さて、裏返して日の裏を組み上げていく。
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ほとんど写真がないw
淡々とカレンダーを取り付けるまで進む。

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カレンダー抑えを取り付けたら、その上に曜日のDISCを入れる。DISCに空いてる穴からオイラーを突っ込んで抑えを少しずらし、回転させつつはめるとよい。

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文字板の取り付け。見よこのコンディション!!めっちゃきれい。おそらくこれまで一度も手が入っていないため、新品のまま残ってきたダイアルである。湿気の浸食もなく、素晴らしい状態を保っている。こんな宝物を、この手で触れて感動。

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アラームインジケーターは外周リングになっており、上から乗せた後側面にあるおさえ板(?)で浮かないように抑える。スムーズに回ることを確認し、針を取り付けていく。
曜日の切り替わりとアラームを合わせ、12時の位置に針を取り付ける。

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針を載せたら・・・

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針オサエでぐいっと押し込む。アラーム時計は、押し込むときにアラーム抑えの分沈み込むので、しっかりと針を押し込まないと浮いてしまうので注意。力を変な方向でいれてしまうと、短針が曲がって文字板に接触してしまうので、慎重に、穴の大きさがあった針抑えを使う。

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磨いたケース、ベゼル、風防、裏蓋。ベゼル下は傷んでいるところはできるだけ削ったが、どうしても錆に浸食された跡は残ってしまう。でもこれはぜんぜんましな方である。
ベゼルはピカピカに磨いたのでギラギラしているw

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ケーシング。何度も何度もチリ吹きでホコリを飛ばし、確認しながら入れ込む。

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ケーシング終了、完成。見よこの輝き!!ベゼルのギラギラ度ヤバイ。

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ケースの傷は完全に取り切れなかったが、形を変えない程度に磨きこんで輝きを取り戻した。

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風防もクリア!視認性抜群。文字板はもはや神々しいレベルである。

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うーん、かっこいい…

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針のクリアランスチェック。実は一度お返しした後、秒針のずれにより分針が外れてしまったため、もう一度秒針の袴を締めなおして曲がりを取り除き、分針もよりタイトにはめ込んで調整している。

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組んだ後は実際の使用で問題がないかをチェックする必要がある。

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この輝き、どうだ・・・!ケースの形はシャープに保ったまま、小傷を取り除きクリスタルガードでコーティングすることでこのように美しい輝きを取り戻してくれた。

…と、いうことで、持ち主にお渡しして、今はストラップを選んでいるとのことであった。こちらから申し出ておきながら手間賃をいただいて直させていただいたSEIKO BELL-MATIC。全く同じモデルを持っているのだが、こんなに良いコンディションのBELL-MATICに触ったのは初めてであった。

長く時計趣味をやっているとこういう事もあるのだなあ、と有難く感じている。Tさん、どうもありがとうございました!

以上、SEIKO BELL-MATCのオーバーホールでした。

以下、その他写真集。1、2枚目は受け取ったときの写真。
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SEIKO BELL-MATICのオーバーホール その2

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さて、バラしていこう。まずは日の裏から。SEIKOのデイデイトムーブメントは、実用性を効率よく追いかけているオーラがひしひしと感じられて素晴らしい。きっと多くの社会人の企業生活をしっかりと支えてきた事であろう。

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目立った汚れのないパーツ。分解された形跡すらない、素晴らしい。

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カレンダーを外したところ。ばねはロディコを吸着させながら慎重にピンセットで取り外す。間違っても細めのドライバーを差し込んではじいたりしてはならない。


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次に輪列をばらしていく。単純明快な構成である。


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受けを外した状態、目が行くのはやはり左上のむき出しのゼンマイ。これはアラームを駆動させる用のゼンマイで、主ゼンマイとは独立して手巻きで巻き上げる。このゼンマイの収め方はBell-Maticの大きな特徴といえる。

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受けの裏側。古い油汚れがこびりついている。


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板状のコハゼ、三番車、四番車を外す。

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香箱も外す。この通りよごれがこびりついている。

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さて、これは二番車。
分針が取り付けられ一分回に一回転するのだが、この写真からわかるだろうか?根元のあたりに茶色い油汚れがびっしりついており、粘り気がとても強くなってしまっている。この歯車が回らないのが今回の時計の不動の原因といえる。

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洗浄にかける前に手でしっかりと汚れを落とす。するとこのようにすっきり!もっかい地板に戻してチリ吹きで空気をあててみて、抵抗なく回ることを確認する。


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次にアラーム機構、切替機構の分解を行う。

この時計は

1.時計機構
2.アラーム機構
3.日付・曜日機構

と大まかに三つに分かれていて、機能別に意識して分解していくと混乱せずに済む。


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バネも使われているため木で押さえながら慎重に取り外していく。


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切替機構には細かいギアがたくさん。アラーム時計は黒のグラフに比べてシンプルなイメージがあるが、切替機構はクロノグラフより部品も多く難しいと思う。
どうでもいいがこの台はSEIKOのS-682というもので使いやすくて大好きなのだが、プラスチックにはいっているスリットの隙間によくパーツがおちるので、このように分解や組み立ての時はセロテープで覆ってしまう。


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あらかた外した状態。あとはテンプの穴石などを外す。

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テンプ受けから穴石を外した状態で地板に戻す。こうすることでひげゼンマイの超音波洗浄ができる、とTwitterで教わったのであった。なんとリプライで教えてくれたのは自宅で時計制作をされている小栗大介氏。トゥールビヨンを自分で作ったりしているすごい人。


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分解したパーツはこのように細かく小部屋に分かれている弁当箱?のような箱に収め、ちゃんと写真でどこがどう固まっているかを残しておく。こうすることで、組み立てるときにねじの組み合わせを間違わずスムーズに進めていける。洗浄した後は同じ位置に戻すことで写真を見ながら間違いなく組み立てられる。

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メインスプリング。香箱の中は意外ときれいであった。ゆびで抑えながら丁寧にほどいて外していく。

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拭いてみると古いグリースの汚れが結構ついてくる。こちらも超音波洗浄の前にしっかり手で洗う。ベンジンをいれたガラスケースに入れてこすったりして汚れを落とす。


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超音波洗浄。位置を変えながら何度もやる。↑は最初にざっと洗っているところで、ケースはこの後プラスチック風防を外して磨いてまた洗浄して、、、というのを何度か繰り返す。ケースも、磨くたびに洗浄して研磨剤を落とす。

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水ですすぎ乾燥させ、終わったら注油しながら組み立てていく。


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組み立ては、分解の逆の手順で進めていく。また、ちゃんとマニュアルを読みながら進めていくのが重要じゃないと手戻りが発生したりして後で悲しい思いをすることになる。


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輪列も注油しつつ戻していく。


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切替機構が終わったのでアラーム機構へ。


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ちゃんとバネと石も注油して戻しておく。

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リュウズとアラーム用ボタンを戻し、動作を確認しながら組み立てていく。
アラームボタンを引かずにリュウズを引いた動作やアラームボタンを引いた(=アラームをONにした)状態でのリューズの操作など、パターン別にきちんと動くか動作を確認していく。

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それがおわったらカレンダー機構へ。

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カレンダー抑えを取り付けたところで、ある部品が箱に残っているのに気付いた。右下にある、星のような形をしたアラームを駆動させるための歯車である。さっき輪列組んだときに一緒にいれとかないといけなかったのを忘れていた

うーんこういう小ボケが作業効率を落としてしまう。もっともっと改善の余地ありである。


つづーく

SEIKO BELL-MATICのオーバーホール その1

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とある縁からとある時計を預かることになった。それは・・・

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SEIKO BELL-MATIC。いわずと知れた国産アラームの名品で、高度経済成長期に多くの企業人を支えたであろう機械式アラーム時計の代表的なモデルである。


持ち主の方曰く曾祖父の遺品らしく、不動の状態で見つかったとのことで、写真とともにTwitterでつぶやかれていたのであった。

通常であれば「おお!僕が持ってるのと同じモデルだ!」と思うだけでイイネを押して済ませるところだったのだが、かなり偶然のご縁があり、どうしてもこの時計をちゃんと動けるようにしたいなあと思ったので、修理を申し出たところ快諾していただいたのであった(無料ではないにも関わらず)。

んで、とどいたのが↑だった。丁寧に梱包されていたうえ、地元のお菓子が同梱されていたのでとても美味しく頂いてしまった。


さて、時計を見ていこう。

固着していた裏蓋をがんばって開けたら、錆と汚れが結構詰まっていた。しかしパッキンによってムーブメント中身への浸食は最小限に抑えられていて、状態は悪くなさそうだな、というのが第一印象。

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ムーブメントを抑える細い針金の部品が錆にやられている。この部品は割れてしまっている個体も多い中、錆にやられてるだけで無事であったので一安心。あとでやすりで丁寧に錆を落とせばよろしい。

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やはりムーブメント本体は無事そう。

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自動巻きローターを取り外したところ。

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リューズ(小さい穴を押すと取れる)とアラームボタン(長方形の板の様になっている部品を押すと取れる)を抜いて、ムーブメントをケースから取り出す。

文字板はこの通りミントコンディション。たまらない。とても美しい。

表面にはうっすいフィルムを張ってあるのだが、中央に向かってサンレイ模様のごとく細い線が入っている。インデクスや針には一切夜光が入っていない。ビジネスマンにはオフィスで夜光など不要だ。多分。表記も最低限で大変好感が持てる。諏訪精工舎のロゴが誇らしい。

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↓は自動巻き機構を取り外したとこ。ドライバーやピンセットの擦り傷が全くない、ねじもきれいなままであるという事は、これまで誰も整備したことがないという事であろう。

しかし肉眼でも穴石の周りなどに、古い油が鉄粉と混じり固まってしまっているのが見える。一刻も早いクリーニングが必要な状態である。

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針のクリアランス。秒針が分針に触ってしまっている。

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ばね棒のささるラグ穴も錆と汚れでつまってしまっている。

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なので、最初からついていたばね棒を取り外すのに少し苦労した。

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風防・ケースはこの状態。こうやってみると汚れて見えるが、これは大したことはない。プラスチック風防は磨けば輝きを取り戻すので、こんなに汚れているように見えても心配無用。

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ただ、この風防とベゼルの間の錆?汚れ?が気になった。かなりの面積が侵食されている。きれいになるといいなあ…

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ベゼルのこじ開け口を探し、マスキングテープで養生してから研いだこじ開けを力いっぱいまっすぐ差し込みいれ、ベゼルをこじあける。ここでこじ開けをひねったりするとベゼルやケースにダメージをあたえるため、まっすぐ差し込むのに意識を全集中させる。

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とれた。
うーん、よごれは想定以上に詰まってしまっている。ただ錆ではなく固まった皮脂?のように見えたので、根気よくこすればきっときれいになると信じている。

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もう40年近く、あるいはそれ以上の時をかけて蓄積された汚れが、ぽろぽろと落ちてきている。すぐ奇麗にしてやるからね、と心の中でつぶやく。

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錆を、油さしの先端を加工した道具で少しずつ少しずつ削る。
これは錆取り剤に漬ける前に、できるだけ大きな錆を取り除いておくためである。風防の側面は平べったいドライバーをこすって汚れを落とす。

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さて、ムーブメントの分解に入る。

針を丁寧に取り外す。サランラップをかぶせ、一番小さなドライバー二本を使い秒針を取り除いた後、分針と時針を合わせて剣抜きで抜く。こんなに美しい文字板にダメージを与える事が万が一にもないように、細心の注意を払って針を取り除く。

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側面に二つ、アラームセット用のリングをとめるねじがあるので、それをゆるめてアラームリングを取り外す。と同時に、別に2つ、文字板の足を固定しているねじがあるので、それもゆるめて文字板を取り外す。するとこうなる↓

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銅色の薄いリング状のシートと、曜日の書かれた円盤を取り外す。ねじを外す必要はない。

日の裏が出てきたが、きれいなものである。ねじも一切傷がない、素晴らしい。
三本線が入っているように見えるねじは、逆向きに回して外す必要がある。
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つづーく。




Omega Memomatic オーバーホール その3

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さて、最終投稿からだいぶ時間がたってしまい、携帯電話からすでにMemomaticの写真を削除してしまっていた。しかしなんとLIVEDOOR BLOGの下書きに写真が残っていたのが発覚し、無事にMemomaticのOHエントリを完結できそうで一安心である。

前回の続き。
洗浄かごに入れ超音波洗浄機にかける。部品数が多いので丁寧にピンセットで部品を持ち上げて、かごの中においていく。
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洗浄が終わり乾かすときはそっとキッチンペーパーの上においておく。
粉塵が少なさそうというのが理由なのだが、なんとなくよくないなあという気もしている。かといって乾燥機など入れられないし、どうするのが正解なのであろうか…
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このように、汚れがとりきれていないところや、錆となってしまい洗ったりこすったりするだけでは取り切れないところがある。
真ん中少し上と下の部分に注目、茶色い汚れが見える。これは錆だったので、錆取り剤をつけてしばらく放置し、もう一度洗う。
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このとおり!錆がなくなってすっきり。こういうのを見ると、ちゃんとメンテナンスしないと怖いなあ…と思う。
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組み立てに入る。裏側のアラーム機構、切替機構から取り付けていく。
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この時点で、普通の時計とは全く違った構造をしていると分かる人もいるかもしれない。部品の形も見たことがないものばかり。右のほうに見えている部品は、リューズとアラームレバーの切り替え、組み合わせを決定する切替機構。複雑な形状で見ごたえ、組みごたえがある。…そんな手ごたえ、なくていいのに。
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下の図は、ある程度切替機構やアラムインジケーター送り車などを取り付けたところ。
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さて、裏側の難しい部分を組むのがひと段落したため、気分転換もかねてケースをクリーニングしていく。まずは研磨して小傷をとる。
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サテン部分は細かな耐水ペーパーとサンエーパールでピカピカに磨く。
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ムーブの裏側を仕上げにかかる。カレンダーやカレンダー抑えを組んでねじ止め。
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いよいよ表側に入る。こういった歯車やほぞに汚れがついていないか、キズミで丁寧に拡大しながら見ていく。たまーに黒い汚れなどがついていることがある。
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あ、先に、この時計独特の機構のくみ上げをご紹介。

下の写真はこの時計の肝の部分。アラームインジケーターをセットするところ。真ん中のパーツに漢字の一のようなマークがついているのが見えるだろうか?
こういう目印に従ってアラーム抑えの歯車を調整することで、組みあがった後できちんとアラーム機構とアラームインジケーターが一致するようにする。
マニュアルでは、誤差は4分以内に収めること、とある。そうとうシビアな設定が必要。
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これもアラーム機構の中身。歯車に△のマークが見えるだろうか?これも日付送りをセットするための目印となる。見えにくいが、地板にこの△を合わせるための目印がついている。アラーム時計で日付送りがあると、調整が結構難しい。アラーム機構のタイミングと、日付送りのタイミングが0:00でちゃんと同期しておく必要があるためである。
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知らないと絶対に見逃すので、事前にしっかり組み立てマニュアルを読むことが大変重要。ムーブ名とPDFとかでぐぐればたいてい出てくるし、最悪はeBAYなどで購入も可能。このキャリバーの場合も以下のように結構丁寧に書いてくれている。
マニュアルがないのにOHするのはよほど慣れたムーブか、シンプルなムーブのみにしましょう。

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下は裏側、輪列をくみ上げて受けをセットしたところ。右上に見える歯車はこはぜ。この時計の特徴として、巻き上げ時のコハゼ音はとてもソフトで柔らかい。あと、下側に見える銀の弓なりの部品は、音環と呼ばれる部品で、ハンマーがこれを叩くことで音を鳴らし響かせる役目を持つ。長ければ長いほどよく響くので、ぐるっとリューズに干渉するギリギリのところまで伸びている。
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アンクルとテンプを取り付けたところ。この時点で元気に回り始めないとアウツ!幸い、スムーズに動き出してくれて一安心。
自分で設置したテンプが勢いよく回り始めるのを眺めるのは、何度味わっても感動する瞬間。
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文字板を取り付けたところ。
文字板は外側と内側で別々になっており、特に内側は複雑な機構となっており癖があるため大変注意深く取り付けする必要がある。でないと、柔らかい素材でできているため曲がったりすぐに傷がついたりする。
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針を取り付けたところ。

針は、非常に注意深く曲がりやゆがみを取ってやることが超大切。その手間を惜しむと、セットしてから止まりや干渉でなんども針をつけ外しし、時計へダメージを与えることになってしまう。

なお、アラームインジケータとしては、▲が時間、=が分に合わせてセットするもの。
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アラーム操作バーは、このように金属の板をかませて固定する。
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本当は自動巻きローターを取り付けるのだが、ぼく個人の好みとして、この時計はできるだけ軽くしたいためあえて取り外している。たった一つの部品だが、驚くほど装着感が変わるのである。
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蓋をしっかりと締める。
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もちろん新品のOリングを取り付ける。しっかりグリースを塗り、少しでも防水性を担保できるよう祈りを込めながら装着。
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ひとまず完成。
OHを終えて超すっきり!!なOMEGA Memomatic。
ビンテージのエクステンションブレスを装着しています。
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めちゃめちゃかっこよくないですか。

OMEGAの時計で、この時計よりカッコいい時計はいまだに数えるほどしか見たことがない。それくらい、かっこいい時計だと思う。
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風防も磨いたためこの通り、超クリア!ケースの小傷も軽く取ったため非常にさっぱりして見える。
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また、当面は元気よく腕の上で動いてくれることを願います。
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新たに22㎜幅のストラップを購入。うすい茶色がよく似合うかなーと思ったためこれにした。
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思った通り、ぴったり!!素晴らしい!!
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この通りズボンの色に合わせて超満足なリストショット。
ほんとうにかっこいい時計である。しかもこれで分単位でセット可能なアラームを備えているというのだから、驚くほかはない。50年近く前に、このようなクールな機械式時計が世に生まれていた事が信じられない。
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もいっちょ、最後にリストショット。
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機械式時計に興味を持ったのは別のOMEGAのSea Masterだったが、その時、たまたま機械式時計でアラーム機構を持つ時計があるというのを知り、OMEGAxアラーム時計というのを探す中でたまたま見つけたもの。

僕の生涯で二本目の機械式時計であり、コレクションの中でも特別な意味を持つ、大変重要な一本。
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以上、MemomaticのOHについて、でした。
たぶん、ここまでムーブメントの中身を紹介した記事は世界初だったかな?

Omega Memomatic オーバーホール その2

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前回の続き。

さて、バラした部品を見ていこう。

まず、アラームボタンと外環リング。この外環リングは多分ゴングが叩いて音を響かせるためのもの。多分ね。
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自動巻き機構を裏から。更に分解が必要。
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アンクル受けとアンクル。そこそこ擦った跡があるので、やはり手入れはされていたんだろうなあ。
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巻き上げ機構。上に2つ見える歯車の左側のパックマンみたいなやつがコハゼ。油切れっぽい。
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輪列。みたところサビとか汚れの固着とかはない。
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香箱とメインスプリング。きれいなものだ。
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切り替え機構の受けの裏側。大小3つの歯車が噛み合っている。黒く輪郭が残ってるのは昔の油の汚れ。
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アラームを抑えるレバーの操縦をする部品。なんか右側の部品、長簿沿い魚みたいで可愛い。
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カレンダー送り機構やアラーム抑えなど。ツツカナも見える。
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アラームを鳴らすゴングを震わせるための歯車とその受け。丈夫にできている。
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位置ごとに分けてこのように格納していく。
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文字板はすぐに格納してその後一切いじらない。これ鉄則。
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ここまでやってあまりの部品の多さにビビり、このような工夫をしてみた。

まず、取り外した場所が近いパーツを塊で紙の上においていき、ペンで丸で囲ってグループを作る。そしてそれぞれのグループに番号を振り、どの部品がどのグループに属すのかを写真で記録しておく。

こうする事で、万一ネジが転がってどこかにいっても、写真のグループごとのパーツの形状と数を見比べれば、どのグループから転がってきたネジかがわかる。部品洗浄後も、正しいグループに置き直せばそのまま直感的に組んでいける。
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クロノグラフの分解でもここまでしなかったのですが、思ったより部品数が多くしかもネジの形状が全く異なるためこのようにして、部品管理をしてみた。デジタル技術バンザイ。

その3へつづーく。

Omega Memomatic オーバーホール その1

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さて、僕が二本目に手に入れた機械式時計であり、アラーム時計にはまる切っ掛けとなった、OMEGA Memomatic。6-7年前に時計屋にOHを依頼した後は全く手つかずであったので、そろそろ分解掃除しようかなという事になった。

緑のシャツと、緑の紐ブレスと共に。時計のブレスは、ビンテージもののエクステンションベルト。ばね棒のところが横にびよっと広がるので、22㎜のラグ幅を持つこの時計にもこのようにハマるのでした。
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蓋を開けたところ。
え?自動巻きじゃないの?と思うかもしれないが、これは僕があえて外してある。理由は、軽量化のためと、自動巻きローター芯の摩耗を防ぎたいたいから。ローターは別の袋に大切に保存してあります。自動巻きの手巻き化、おすすめです。
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裏ブタ。あらまあ、、、さびも浮いてるし汚れがひどい。
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というわけでばらしていく。まずは外環のリングを取り外す。いきなり思ったより複雑で、これは分解にあまり慣れてない人が手を出したら一発で分からなくなるやつだと思いました。
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ケースの中身。この個体は文字板の状態も良く、素晴らしい。
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緊張した面持ちで針を取り外す。真ん中の印はアラームインジケーターで、この時計のすごいところは、なんと時間と分の両方でアラームセットできることである。とはいえ厳密に分単位で会わせられるわけではなく、組み立てManualの注釈には『+ー4分でアラームが鳴るとよい』みたいな事が書かれてあった。
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裏返して、ムーブメントをばらしていく。
この瞬間が緊張するし、わくわくするし、楽しい。体験したことある人しか分からないはず。
ほんっと楽しいのです。
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自動巻き機構の取り外し。ここまでは、ローターを外した時にやったことがあったのでした。
(ドライバーが写ってますがもちろんこんな適当なドライバーで分解してる訳ではないです)
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真っ先にテンプを取り除く。実はこれも二度目で、昔テンプがずれてたことがあり、修正するのに外したことがあった。

ムーブメントの刻印も見える、Cal.980 である。元はレマニアのアラームムーブで、それをOMEGA用に色をつけたりカスタムしたりしたものだ。
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輪列受けを取り外す。ここから先は未知の部分。ドキドキ…

なんとなく見て思うのは、向かって左側は普通の時計の機構で、右にアラーム用の機構があること、香箱(メイン動力源)は一つであり、時計の運針とアラームを鳴らす動力は同じ主ゼンマイからとってきているという事だ。
(SEIKO Bell-maticや、VulcainのCricket、JLCのMemovoxはアラーム用に独立したゼンマイがある)
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せっかくなので右側のアラーム機構側からバラしていく。
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この銀色に光っている金属の塊はハンマー。これがすごい勢いで振動し、外環リングを叩く事によってアラームを鳴らすという仕組みである。
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ハンマーを震わせる役割をもつ歯車は、右の白いプラスチックの歯車。なんと!金属ではないのか。こりゃーアラームならしまくって消耗させるのはヤバいね。
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こんな感じで、アラーム振動用歯車の上側をはずすと、大きい歯車の内径に小さい歯車があるのがわかる。理解力がないのでなんのためかよくわからないのだが、おそらくは回転速度を上げるため、、、だろうか?ものすごく小さい歯車なので慎重に外し、慎重に置く。
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とれたとれた。アラーム関連機構と写真を撮る。
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これでなんの気兼ねもなく?輪列をばらしていける。
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裏がバラバラになったので次は表。文字板を取り外す。この青い部分は圧入されているだけなので、少しずつこじって外す。心臓に悪い。
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アラームインジケーターは、この2つが一つの部品になっている。分解しようとしたがよくわからなかったので、怖くなってあきらめた。
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カレンダー抑えとカレンダーディスク。このフォント好き。
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カレンダーを取り外す。
注目すべきは、中央に写っているアラームインジケーター回転ギア。大きな円盤の周囲に歯が切られている。さらに中央下には歯車が。
あとは、切替機構。リューズと、アラームボタンは下ー右にかけて見えるが、外から見るとシンプルだが、中はなかなか複雑だ。アラーム時計はアラーム機能ボタンとリューズ操作が連動しているケースがほとんどのため、このように切替機構が複雑になりがち。
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別角度から。
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いちばんなくなるリスクの高いカレンダー抑えばねは、率先して取り外す。取り外すときはこのように抑えたり、ロディコで固定したり、ビニール袋やサランラップの中でやったりする。それくらい注意しても注意しすぎるという事はないのです。
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次にアラームインジケーターの作動ギアをばらしていく。
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こんな感じ。真ん中の部分がアラームが鳴る仕組みである。鉄の棒が左上に向かって伸びており下にすこし曲がっている。これでアラーム作動ギアをロックしている。これが少し浮くとロックがはずれ、アラームが作動する仕組み。開けてみれば何のことはないシンプルな機構だが、これを考え付いて実装する(しかもPCもメールも無い時代)のは変態レベルのすごさ。
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こうしてみると、けっこう汚れがたまっている。でも削れたりしてないので状態はヨイね。
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恐る恐る、アラーム機構を外していく。絶対に部品を飛ばさないように。。。
ネジも形が違うので、どこから何を外したかというのは覚えておかねばならない。
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切り替えレバーや、アラーム機構を取り外しましたの図。左側、切替機構の部品がまだ残っている。タツノオトシゴのような形の金具が、リューズの場所に応じてアラームボタンの状態を切り替える部品。
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ばらした部品をまとめたら、こうなる。
思ったより部品数が多く複雑で、ネジの種類も多い。ものすごく怖い。
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地板。
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最後に、リューズを抑える部品であるカンヌキとばねをばらす。このばねも、もし飛んでいけばTHE/ENDなので、放射性物質並みに厳重に取り扱う。おすすめは、まずはロディコで吸着する事です。
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ここまでばらし終わったわけだが、ごらんのとおり、Cal.980は部品数が多く下手したらクロノグラフより多いのでは?と思わされた。紙に整列させたあと、丸をかいてグルーピングし、絶対に写真を撮るのを忘れない事。もし忘れたら組み立てられませんです。


次回へつづーく。



ジャンクなZODIAC ASTRODIGITのケースクリーニング

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さて、ボロボロの状態で届いたAstrodigit

早速細部を見てみるが…酷いものだ。隙間という隙間には皮脂とホコリの混じったようなものがビッシリと詰まっていて、固着している。


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このように、打ち傷、擦り傷は数えられない。
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一番わかり易い表面からきれいにしていこう!ということで、ガラス部分と側面にマスクしてから粗めの耐水ペーパーで擦っていく。
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どんどん耐水ペーパーの目を細かくしていき、最後はヘアライン加工用のスポンジでまっすぐ筋目を入れていく。
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こんな感じ。文字の中の墨が抜けるが、これは仕方がない。まだうっすら傷が残っているのだが、これは、重要文化財並みに貴重なこの時計をあまりヤスリでガリガリやり過ぎるのは僕の精神が持たないためである。

んで、上側も同じようにすすめる。
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ガリガリガリガリ…
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こすってる途中。
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ヘアラインまで入れたのがこちら。削ってるので当然ながら文字も削り取られている。
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細かな傷はあらかたとれたので、次はサビの除去などのクリーニングを行う。横に見えてるのはヘアライン用スポンジ。
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錆取り液をサランラップにあけ、爪楊枝で細かく塗布していく。
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ネジの折れている4箇所と、側面のボタン部分の錆がひどいので、トントンと厚く乗せていく。
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どんどんサビが浮いてくる。君たち、一体何年前からサビとして存在してるのかね…?
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ケースの中のムーブメントが収まる周囲にもサビがういているため、ここにも錆取り液を塗布していく。
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もちろん、セッティング用のボタンも。サビがかなり浮いているため厚く盛る。あまりにもサビが多く、途中何度か拭き取り、また盛り直すのを繰り返した。
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だんだんとスッキリしてきた。
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‥のまえに、プッシャー部分も磨いてきれいにする。
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次はエッジのクリーニング。テープでしっかり保護して同じように、ヤスリがけ。エッジを丸めないよう細心の注意を払う。
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ちなみに、超音波洗浄にはかけていない。ガラスの奥のミラー部分が少し傷んでおり、超音波洗浄で万一影響があってはいけないと思い控えた。

さて、次は墨入れ。

オイル挿しにタミヤカラー黒を載せ、このように盛っていく。はみ出る部分はどうせ削り取るので構わない。
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拡大機能でガン見しながら、ものすごく気をつけて盛っていく。
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上も下も盛り直し。乾いた頃に、オイル挿しで不要なタミヤカラーを細かく削り、最後はヘアライン加工用スポンジで削り飛ばす。
本当はこの上に紫外線硬化剤などでコーティングすると良いらしいのだが、残念ながら手に入らなかったので見送り。
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できた。
だいぶスッキリしたんじゃないかな?
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戯れにセイコーのブレスを着けてみるなど。
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中に新品のムーブを入れたらなんとか動いたので一安心。

だがなんと、
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もともと入っていたムーブがすでにオリジナルから入れ替えられていた…。入ってたムーブと同じものを発注したので、間違えたムーブを新品で買ってしまった😂秒表示やクロノグラフ機能がないので、あれ?おかしいなとは思ってたのだが…(笑)


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とはいえ、キレイになった幻のアストロディジットが実用できるというのは単純に嬉しい。ケースだけでも、別格のオーラを放つモンスターウォッチでした。


とはいえ所詮ケースのみのジャンク上がり、かつジャンクすら全く世の中に出てこない幻のモデル。ブレスレットなど揃うわけ無いと思いながらも、気長に探してみようと思いました。十年以内に見つかれば超ラッキー!と言う事で…





まるで幻のポケモン…ZODIAC Astrodigit 入手

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以前から探していたZODIACのAstrodigitというLCD時計。
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幻の一本


僕の敬愛するUT氏の神サイト、UT Designで始めてみてからずっと探していた。ただのLCD時計なのにただならぬオーラを発していて、大変魅力的に感じたのでした。
ZODIAC ASTRODIGIT LCD CHRONOGRAPH  - UT Design
http://utdesign.syuriken.jp/watch/motel.html
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このページを一読して分かることはものすごくレアな時計であること、ものすごく格好良い形をしていること、本当にごくわずかの人しか所持してないこと、などである(あと、ユナイテッドアローズがパクリデザインの時計を発売しプチ炎上したこと)。

日本人だと、以下のコレクターが所持している事が確認できる。
MONDO WATCH - by HAL Design
http://www.juno.dti.ne.jp/~hamahal/Zodiac_Astrodigit.html
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高藤冬木の古時巡礼
http://pre-cog.jugem.jp/?eid=10
http://pre-cog.jugem.jp/?eid=19
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実際、Instagramなどで探しても、日本のコレクターが1-2名(上記コレクターと被っている可能性あり)、それから海外のコレクターが一人ヒットするだけで、その他は全くヒットしない。

色違いはSS、コンビ、SSx黒 の三種類が確認されているのみ。他にもAstrodigitの名前で売られているZODIACの時計はあるのだが、このシェイプがもう圧倒的、二段も三段も上のかっこよさだと思う。

デザイン性の高さを示す逸話として、シルバーx黒のモデルはスイス最大の時計博物館である、ラ・ショー・ド・フォン(MIH)の時計博物館(Musée international d'horlogerie)にも収蔵されているという話もあるほど。これは僕が裏付けが取れてないので、誰かご存じの方は教えて下さいませ。

ほしいのに見つからない


この時計、本当に笑ってしまうほどどこにもない。

一時期、ムキになって翻訳サイトとか使いながらいろんな言語のフォーラムを漁ってみた事もあったが、本当にない。多分、これを読んでいる人も、一度も売られている所を見たことがないと思う。

ところがある日…、なんと、某ベイに、出ているではないか・・・・!!ボロッボロのジャンクで、しかもブレスレットも紛失しているが、紛れもないAstrodigitの本体…!!!
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しかも見た日にそのまま終了するようなので、夜中まで粘って落札する。他にも狙ってる人がやっぱりいて、警戒して高めを指しててよかったーw

んで、届いたのが、コレ。
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写真と同じくらい酷い。ボロボロ。裏蓋のネジもすべて紛失、1つ以外の穴はすべてネジが折れ込んでいる。だが、欠品はなくボタンも完動、液晶表示付近も軽度のダメージに住んでいるので、磨けば光るのでは、と安心した。

ムーブはぶっ壊れているが、汎用ムーブであることは確認済み。チップにZODIACのシールが貼られていて、おおー純正かー!と思ってたら、実はこれすでに入れ替えられていて、違うモデルのモジュールが動いていたようだw(新しいの買ってから気づいた。。。)

わざわざZodiac純正の他チップと入れ替えるとか、よほどの捻くれ者が使ってたか、直したかしたんだろうなあ…。よくぞ手元に来てくれた、ありがとう!

というわけで、そのうち研磨、それからムーブの入れ替えに続きます。

以上、ZODIAC Astrodigit (の一部)入手のお話でした。
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余談

ちなみにどれくらい探してたかというと、多分最初に探し始めたのが2014年くらい。んで、今回はじめてこのモデルのまともな出品を見た。(3-4年前に、裏蓋なし、ボタン・ガラス無しのほぼ鉄くずのケースが出たのを見た気はするが定かでない)つまり、6年に一度は出てくるようです、欲しい人は根気強く待ちましょうw



OMEGAビンテージクォーツめっさいい

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お世話になっている人から、時刻合わせ、ブレス合わせをして欲しいと言われて預かったこのオメガのクォーツ。

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修理内容


かなりのビンテージ品だったのだが、割と使われていたらしくあまり風化はしていなかった。ただし、その分しつこい汚れと錆あり。そんなもんはいつもどおり裏蓋を開けこすったり超音波洗浄したりかるーーく研磨したりで、割とすぐに治る。

電池交換も一瞬。ただ、時刻合わせがかなりわかりにくく、リューズを一弾弾いても時針しか調整できない。分針は、リューズを押し込んで進めるタイプであった。これが、かなりきつーーく押し込まないといけなくて、おそらく、皮脂汚れで固まったリューズでは十分に押し込むことができず、時刻合わせが壊れていると勘違いしたのであろう。

コマ詰めも同じで、ブレスを外すスプリングが腐って完全に固着していた。時計店で、無理だと断られたのことだが、腐ったスプリングを破壊していいならできるので、これもマイクロリューターでスプリングを削り取り、無事に完了。

そして、動作確認…という名の試着。

カッコ良すぎる


これが、ほんまに良い。
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写真から伝わらないかもしれないが、この肉厚のケース感、丁寧に面取りされたエッジ、ポリッシュ仕上げのベゼル、本当に美しいのである。

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極めつけは、このブレス。
ものすごく質感がよく、仕上げが素晴らしい。装着感抜群。

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この通り、ケースはゴルフの砲台グリーンのようになっており、少し下がったところからニョキっとベゼルが映えてて、めちゃめちゃ細かいがめちゃめちゃ格好良い。

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文字盤の深いブルーもたまらん。光に当てると、様々な表情を見せてくれる。

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正面から見てもすごくヨイ。3連ブレスが上下にちらっと見える。

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少し持ち上げてみた所。エッジの仕上げとブレスの質感、ベゼルの生え具合が見て取れる。

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惚れ惚れするブレス。軽く研磨とヘアラインの傷取りをしたが、ここまで美しくなるとは思わなかった。。。

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驚くべき時計である。

なんというか、この自体のオメガ特有の色気、というのだろうか、それとも妖気、とでも言おうか、、、そんなのをうちに秘めつつも、当時は最新のクォーツムーブを落ち着いたデザインに帰着させていて、見事。
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もうほんと、この適度に重量感があって、贅沢に仕上げてあるブレスが絶品。
厚みや折曲具合から伝わるだろうか。。。

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丁寧に整形されていることが分かるケースとブレス。

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ブレスの側面は、少しカーブのかかったポリッシュ仕上げ。これが、装着時に少し離れてみてもキラキラ光って、きれいなのである。

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ましたから。ベゼルの下側側面もポリッシュ仕上げ。今回軽く磨いておいたら、この輝き。。。

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じっくりと試着してK女史に返却。素晴らしい時計を見せていただいてありがとうございましたー!

謎リファレンス


でも不思議なことに、この時計のReferrenceが分からない。。。ぐぐってもそれらしいものが見つからない。ケース、ブレスは↓にとても似ているのだが、これ自動巻きっぽいし…
Seamaster 1974 Cosmic ST 366.0838
https://www.omegawatches.com/watch-omega-seamaster-cosmic-st-366-0838

もしご存知の方がいたら、教えて下さいませ。






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