Omega Memomatic オーバーホール その3
さて、最終投稿からだいぶ時間がたってしまい、携帯電話からすでにMemomaticの写真を削除してしまっていた。しかしなんとLIVEDOOR BLOGの下書きに写真が残っていたのが発覚し、無事にMemomaticのOHエントリを完結できそうで一安心である。前回の続き。
洗浄かごに入れ超音波洗浄機にかける。部品数が多いので丁寧にピンセットで部品を持ち上げて、かごの中においていく。
洗浄が終わり乾かすときはそっとキッチンペーパーの上においておく。
粉塵が少なさそうというのが理由なのだが、なんとなくよくないなあという気もしている。かといって乾燥機など入れられないし、どうするのが正解なのであろうか…
このように、汚れがとりきれていないところや、錆となってしまい洗ったりこすったりするだけでは取り切れないところがある。
真ん中少し上と下の部分に注目、茶色い汚れが見える。これは錆だったので、錆取り剤をつけてしばらく放置し、もう一度洗う。
このとおり!錆がなくなってすっきり。こういうのを見ると、ちゃんとメンテナンスしないと怖いなあ…と思う。
組み立てに入る。裏側のアラーム機構、切替機構から取り付けていく。
この時点で、普通の時計とは全く違った構造をしていると分かる人もいるかもしれない。部品の形も見たことがないものばかり。右のほうに見えている部品は、リューズとアラームレバーの切り替え、組み合わせを決定する切替機構。複雑な形状で見ごたえ、組みごたえがある。…そんな手ごたえ、なくていいのに。
下の図は、ある程度切替機構やアラムインジケーター送り車などを取り付けたところ。
さて、裏側の難しい部分を組むのがひと段落したため、気分転換もかねてケースをクリーニングしていく。まずは研磨して小傷をとる。
サテン部分は細かな耐水ペーパーとサンエーパールでピカピカに磨く。
ムーブの裏側を仕上げにかかる。カレンダーやカレンダー抑えを組んでねじ止め。
いよいよ表側に入る。こういった歯車やほぞに汚れがついていないか、キズミで丁寧に拡大しながら見ていく。たまーに黒い汚れなどがついていることがある。
あ、先に、この時計独特の機構のくみ上げをご紹介。
下の写真はこの時計の肝の部分。アラームインジケーターをセットするところ。真ん中のパーツに漢字の一のようなマークがついているのが見えるだろうか?
こういう目印に従ってアラーム抑えの歯車を調整することで、組みあがった後できちんとアラーム機構とアラームインジケーターが一致するようにする。
マニュアルでは、誤差は4分以内に収めること、とある。そうとうシビアな設定が必要。
これもアラーム機構の中身。歯車に△のマークが見えるだろうか?これも日付送りをセットするための目印となる。見えにくいが、地板にこの△を合わせるための目印がついている。アラーム時計で日付送りがあると、調整が結構難しい。アラーム機構のタイミングと、日付送りのタイミングが0:00でちゃんと同期しておく必要があるためである。
知らないと絶対に見逃すので、事前にしっかり組み立てマニュアルを読むことが大変重要。ムーブ名とPDFとかでぐぐればたいてい出てくるし、最悪はeBAYなどで購入も可能。このキャリバーの場合も以下のように結構丁寧に書いてくれている。
マニュアルがないのにOHするのはよほど慣れたムーブか、シンプルなムーブのみにしましょう。
下は裏側、輪列をくみ上げて受けをセットしたところ。右上に見える歯車はこはぜ。この時計の特徴として、巻き上げ時のコハゼ音はとてもソフトで柔らかい。あと、下側に見える銀の弓なりの部品は、音環と呼ばれる部品で、ハンマーがこれを叩くことで音を鳴らし響かせる役目を持つ。長ければ長いほどよく響くので、ぐるっとリューズに干渉するギリギリのところまで伸びている。
アンクルとテンプを取り付けたところ。この時点で元気に回り始めないとアウツ!幸い、スムーズに動き出してくれて一安心。
自分で設置したテンプが勢いよく回り始めるのを眺めるのは、何度味わっても感動する瞬間。
文字板を取り付けたところ。
文字板は外側と内側で別々になっており、特に内側は複雑な機構となっており癖があるため大変注意深く取り付けする必要がある。でないと、柔らかい素材でできているため曲がったりすぐに傷がついたりする。
針を取り付けたところ。
針は、非常に注意深く曲がりやゆがみを取ってやることが超大切。その手間を惜しむと、セットしてから止まりや干渉でなんども針をつけ外しし、時計へダメージを与えることになってしまう。
なお、アラームインジケータとしては、▲が時間、=が分に合わせてセットするもの。
アラーム操作バーは、このように金属の板をかませて固定する。
本当は自動巻きローターを取り付けるのだが、ぼく個人の好みとして、この時計はできるだけ軽くしたいためあえて取り外している。たった一つの部品だが、驚くほど装着感が変わるのである。
蓋をしっかりと締める。
もちろん新品のOリングを取り付ける。しっかりグリースを塗り、少しでも防水性を担保できるよう祈りを込めながら装着。
ひとまず完成。
OHを終えて超すっきり!!なOMEGA Memomatic。
ビンテージのエクステンションブレスを装着しています。
めちゃめちゃかっこよくないですか。
OMEGAの時計で、この時計よりカッコいい時計はいまだに数えるほどしか見たことがない。それくらい、かっこいい時計だと思う。
風防も磨いたためこの通り、超クリア!ケースの小傷も軽く取ったため非常にさっぱりして見える。
また、当面は元気よく腕の上で動いてくれることを願います。
新たに22㎜幅のストラップを購入。うすい茶色がよく似合うかなーと思ったためこれにした。
思った通り、ぴったり!!素晴らしい!!
この通りズボンの色に合わせて超満足なリストショット。
ほんとうにかっこいい時計である。しかもこれで分単位でセット可能なアラームを備えているというのだから、驚くほかはない。50年近く前に、このようなクールな機械式時計が世に生まれていた事が信じられない。
もいっちょ、最後にリストショット。
機械式時計に興味を持ったのは別のOMEGAのSea Masterだったが、その時、たまたま機械式時計でアラーム機構を持つ時計があるというのを知り、OMEGAxアラーム時計というのを探す中でたまたま見つけたもの。
僕の生涯で二本目の機械式時計であり、コレクションの中でも特別な意味を持つ、大変重要な一本。
以上、MemomaticのOHについて、でした。
たぶん、ここまでムーブメントの中身を紹介した記事は世界初だったかな?